こんにちは!株式会社PhotoructionでAIエンジニアをしています志賀です。 Photoruction Advent Calendar 2021の21日目の記事です。
目次
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はじめに
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AIエンジニアになろうと思った経緯
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AIエンジニアという職業に対する考え方 before
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AIエンジニアという職業に対する考え方 after
(1). 巨人の肩の上に乗る
(2). エンジンだけでは車は動かない
(3). 高度なものはいずれ民主化する
(4). AI民主化による回帰は悪か
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最後に
1. はじめに
時が過ぎるのは早いもので、AIエンジニアとしてキャリアをスタートしてから、早2年経とうとしています。
そんな中過去の記憶を辿ってみれば、色々な思いや考えが沸いてきては消え、沸いてきては消えを繰り返している事に気がつきます。まるで、般若心経の作者に「色は空で空は色なのだよ。」と日々語りかけられているように感じています。
ただその繰り返しの中でふと後ろを振り返ってみると、細胞が破壊と再生をただひたすらに繰り返す中徐々に姿形が変わっていく成長期の子供のように、思いが沸いたり消えたりする中で実はAIエンジニアの職業観も大きく変わってきている事に気がつきます。という事で、この2年でどんな風に、AIエンジニアとしての職業への考え方が変わったのか振り返ってみたいと思います。
2. AIエンジニアになろうと思った経緯
実は前職では、今やっている事とは殆ど関係ないSalesforceというシステムのSIer業をしていました。
当時前職の会社に入社したばかりの頃は、ITに関して何の知識も持たない、いわゆるポテンシャル採用系のザ・新入社員だった為、ITの事もそんなによく分からなければ、残念ながら自社の導入しているシステムが本質的にどんな価値があるのかもあまりよくはわかっていませんでした。
そんな迷える子羊のような状態で、端からみればビクビク怯えていそうですが、当時の心境としては、新しい仲間、先進的な技術で世界の先頭に立てる事への期待で、ワンピースのルフィよろしく「どんな冒険が待ってんだ!!?」とウキウキしていました。
やがて、そんなこんなで新卒研修や業務に携わり色々と学んでいく中で、Salesforceの何がすごいのかを少しずつ知るようになりました。
しかし、それとは反比例するかのように段々とSalesforceという先進的ITシステムへの興味を失っていきました。普通に考えれば、すごい!ということを知れば知るほど、どんどんのめりこんでいきそうな気がするのですが。。この原因に関しては、4章(3)で話そうと思います。
そんな中、機械学習なるものと出会いました。それから、機械学習に関する書籍を買い、難解な理論を理解する事に次第に快感と感動を覚えるようになり、AIエンジニアとして転職する事を決意しました。
3. AIエンジニアという職業に対する考え方 before
当然の事ではありますが、AIエンジニアとして転職を決意してからすぐに転職できるわけではありません。
という事で、独学及びスクールでその後約半年間一から勉強するわけですが、当時勉強していたのは、例えば「ゼロから作るdeep learning」を読んで実装してみて、や、決定木やSVMなどのアルゴリズムをスクラッチで実装してみたりなど、いかにも機械学習入門者が最初やりそうな事をやってました。
このようにして、色々とアルゴリズムを勉強して自分で実装していく中で、「様々な機械学習アルゴリズムの仕組みを深く理解し、それを実装していく。」これがAIエンジニアだと思ってました。
ちょうど、スクールに通っていて三分の二ぐらいを過ぎた位までの、AIエンジニアという職業への認識なのですが、ここまでをbeforeとします。
4. AIエンジニアという職業に対する考え方 after
(1) 巨人の肩の上に乗る
スクールでの学習も最後の方になると、実際に論文を読んでFaster R-CNNという物体検出アルゴリズムを実装しようということになりました。
当然今まで、線形回帰から畳み込みニューラルネットワークまでスクラッチで実装してきたので、スクラッチとは行かずともTensorflowやPyTorchで一から実装していくのだと考えてました。
ただそこで行ったことは、何時間も費やして一からアルゴリズムを組み立てる事ではなく、論文を元に実装されgithubで公開されたアルゴリズムを流用する事でした。この時に、少し何というか拍子抜けする感覚がありました。ですが、実務を考えれば確かに既存の実装されているアルゴリズムで学習して応用する方が遥かに効率が良いと納得しました。
これは自分の中で、アカデミックな観点から認識していた「実装」という概念を実務的な観点から捉え直した瞬間でした。
(2) エンジンだけでは車は動かない
その後現職に就職し様々なプロジェクトを通して、どんなアルゴリズムも目的を達成する為の一つの道具でしかないという事を認識しました。
極論を言ってしまえば、たとえ機械学習やディープラーニングのアルゴリズムをより深いところまで理解していなかったとしても、実務的な課題をクリアさえ出来るならそっちの方が良い。それぞれの道具をより深く理解する事よりも、その道具をどう活かし組み合わしで課題を解決するかの方が実務では遥かに重要だと理解しました。
その為、実課題を達成するためには機械学習のアルゴリズムを理解するだけでなく、例えばPDFのデータから情報を抽出する等の前処理や、実課題に合わせた適切な評価検証、更にはAPIとして公開する為のインフラの構築、他プロジェクトに関わるメンバーとの円滑な意思疎通など、実課題を解決するために必要な道具は実に多くあるという事を思い知らされました。
ここで、「AIエンジニア」というのは、(勿論大分抽象的な言葉で捉え方は多岐に亘ると思いますが私の中では)「機械学習などのアルゴリズムを実課題を解決する為の一つの道具として、他の様々な道具とともに用いる事ができるエンジニア」というものに変化していきました。
(3) 高度なものはいずれ民主化する
このような事を実際の実務の経験を通して肌身で実感してから、「Salesforceを深く理解したエンジニア」ではなく、「Salesforceを課題解決の為の一つの道具として使いこなす事ができるエンジニア」をSalesforceエンジニアであると捉え直した上で、改めて前職で経験したSalesforceとは何だったのかを考える直すようになりました。
その結果、Salesforceは、CRMシステムという複雑で開発に大変手間がかかる一つのソリューションサービスを、誰でも使いやすい形に道具化したもの、つまり「ITシステムを民主化した」サービスであると今では認識しています。
思い返せば、当時、前職の会社のCTOの方がSalesforceに感動してSalesforceに惚れ、Salesforceを愛しているから今の職業をしていると言っていたのが記憶から蘇ります。当時のCTOは、このSalesforceによって得られる「ITシステムの民主化」による恩恵の素晴らしさにこそ感動し惚れていたのではないかと今では思います。では、なぜその感動が自分にはなかったのか。逆に興味を失っていってしまったのは何故なのか。
私の中では、それは「リープフロッグ」が原因であると結論づけています。
リープフロッグとは適当に訳せば「跳ぶカエル」となりますが、これは端的に言えば、様々な技術の変遷をすっ飛ばしていきなり新しい技術から参入するという意味です。リープフロッグの例として有名なのが、発展途上国のキャッシュレス化です。韓国に至っては決済比率の90%近くがキャッシュレスであるそうです。そんな国にそんな時代で生まれた人にとっては、キャッシュレスなど当然の事でその有り難みを実感することは難しいでしょう。一方で私のような現金で生きてきた人間にとってみれば、改札でわざわざ切符を買わずにスマホ一つで抜けられる有り難みを肌で感じ、いつも感動に身を震わしています。
リープフロッグの話が長くなりましたが、同じように、あらゆる技術をすっ飛ばしてSalesforceから始めた自分は、Salesforceによってもたらされた「ITシステムの民主化」の恩恵を肌身で感じていない為に、その素晴らしさもまた、理解はできても肌身で感じる事が出来なかった。それに加え、民主化されてしまったことに逆につまらなさを感じてしまった。それゆえに、興味を失ってしまったと理解しました。
今後AIエンジニアの在り方も将来のAIのあり方とともに変わっていくでしょう。では、今後AIがどうなっていくかと言えば、ITシステムが民主化されていったのと同じようにAIも民主化されていき、それに合わせてAIエンジニアのあり方も大きく変わっていくだろうと想像しています。
その場合、扱うサービスの対象がSalesforceから例えばAWSやGCPに変わるだけで、本質的には職業のあり方として前職と何ら変わらなくなるのかも知れません。
(4)AI民主化による回帰は悪か
では、今後Salesforceに興味を持てなくなったのと同じようにAIにも興味が持てなくなるか、と言えばそうではないと確信しています。その理由は(3)で述べた通りですが、前職のCTOがSalesforceに自分なりの意義を見出していたように、AIを扱うAIエンジニアという職業を、「リープフロッグしていない」AIエンジニアとしてより強く意義づけする事ができると確信しています。
最後に
ちょっと、最後の方はエモい感じになりましたが、職業観を考える事はあまりないので良い機会になったと感じています。読んで何か得られるような内容ではないですが、「この人は自分の職業に対してこう考えてるんだな。自分はこう考えているけど。」と言った感じで、何か考えるきっかけにでもなっていたら嬉しいです。最後まで読んで頂きありがとうございました。
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